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男はつらいよ [映画]

そらへいさんや2kさんのブログに映画「男はつらいよ」にふれた記事があったので、

久しぶりに「男はつらいよ」を2作品ほど引っ張り出してみた。

このシリーズは、3作目ぐらいまではリアルタイムで観ていたが、

それ以後は次々に新作が公開されても、ほとんど無視していた。

毎回同じ設定で繰り広げられる風来坊話に、あまり興味がわかなかったのだ。

渥美清が亡くなった後に、4ヶ月かけて全48作品を観た。

改めて観てみると、なんとも味わい深い作品だということに気付いた。

突出したキャラクターを作り出した監督の山田洋次と

役を演じた俳優の渥美清のすごさに感服した。

誠実な目線で切り取られた、生活感のある昭和の景色も素晴らしい。

「男はつらいよ」が愛される理由のひとつに、寅の台詞回しの良さがある。

寅次郎は自分のことに関しては、まったくのダメダメ男だが、

他人の悩み事や人生については的確な名言を吐く。


映画「男はつらいよ 柴又より愛をこめて」

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夫と喧嘩して家出したあけみ(美保純)を諭す寅の台詞。

「ねぇ、愛ってなんだろう」

「お前も、めんどうなこと訊くねぇ。

ほら、いい女がいたとするだろう。

男はそれを見て、ああ、いい女だなぁ。

俺はこの女を大事にしてぇ。そう思うだろう。

それが愛っていうのじゃないか」


映画「男はつらいよ あじさいの恋」

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失恋して郷里に戻った、かがり(いしだあゆみ)をなぐさめる寅の台詞。

「誰を恨むってわけにはいかないんだよな、こういうことは。

そりゃ、こっちが惚れてる分、向こうもこっちに惚れてくれりゃぁ、

世の中に失恋なんていうのは、なくなっちゃうからな」


ほぼ全作品に、このような台詞がちりばめられている。

「男はつらいよ」シリーズには多くの名作がある。

浅丘ルリ子の「寅次郎忘れな草」や太地喜和子の「寅次郎夕焼け小焼け」などが有名だが、

僕は、いしだあゆみが、かがりという清楚な女を演じた「寅次郎あじさいの恋」が気に入っている。

漁村の舟屋で、かがりが「飲まない?」と寅に酒をさすシーンから、

それまでの「男はつらいよ」とはちがうムードが漂いはじめる。

かがりは、寅を強く意識している。

寅も、かがりの思いに気づいている。

その夜、かがりは心優しい寅に身を任せようとする。

かがりは、ふすまを開け寅の寝ている部屋に入ってくる。

部屋の窓を閉め、電気を消し、寅の横に座る。

寅は寝たふりをして、それに応えようとしない。

かがりは、寅が寝たふりをしていることを察しているが、じっと待つ。

それでも寅は目を開けない。

かがりは寅を諦めて、そっと部屋を出ていく。

画面は、そっと部屋を出て行くかがりの素足のクローズアップを捉える。

そのショットが、かがりの中にある秘められた思いを表現しようとする。

この一連のシーンは台詞もなく、夜の海辺のさざなみの音がかすかに聴こえてくるだけだ。

まるでヨーロッパの恋愛映画のような緊張感のあるシーンになっている。

僕は息を飲んでこのシーンに見いってしまった。

「寅次郎 あじさいの恋」は、清楚さと大胆さを併せ持った女の思いを、

いしだあゆみが美しく演じた作品だ。
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