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シズル [CM]

食べ物の美味しさや魅力を伝える表現に、シズル感という言葉があります。

もともとは、熱した鉄板の上で肉がジュウジュウと音を立てるような擬音を表す言葉です。

カレールウが、肉やジャガイモと共にご飯の上にかかるシーン。

ハンバーガーパテが、バンズの上に舞い降りて弾むシーン。

チャーハンの米粒が、中華鍋の鍋底から舞い上がるシーン。

カットされたピザを引き上げると、たっぷりのチーズが糸を引くシーン。

チャーハン.jpg

pizza.jpg

そういう映像をテレビCM等で観たことがあるかと思います。

簡単で何でもなさそうに見えますが、案外、時間のかかるやっかいな撮影です。

狙い通りの映像が撮れるまで、実際の食材を使って何度も繰り返し撮影します。

撮影しているうちに、新たなアイデアや注文が出てくるので時間もかかります。

デジタル全盛の時代でも、食品のシズル感だけは、CGでは作れません。

そんなシズル撮影のとき、お世話になるのが湯気師と呼ばれる撮影スタッフです。

麻婆豆腐や回鍋肉などの熱々の中華料理。

フライドチキンやポテトなどの揚げ物。

肉まんやシウマイなどの蒸し物。

鍋料理やラーメンなどの汁物。

鍋.jpg

温かい食べものに絶対に必要なシズルは湯気です。

湯気師とは、それらの食べものに合わせて湯気を作り出すスタッフのことです。

撮影に使う食べものは、素材の美しさや盛り付けの完成度が重要なので

それに合わせて、カメラアングルやライティングなど、若干の修正をしなくてはなりません。

ところが、セッティングをしているうちに本物の湯気はなくなってしまいます。

そこで、あらたに湯気を加える必要がでてきます。

湯気を出すホースの先端に食べ物の形状に合わせた被せ物を取り付け

その被せものから直に食べ物に湯気をあてていきます。

20~30秒間湯気をあて、食べ物に湯気がなじんだ頃に被せ物を外して撮影します。

湯気師の作業はとてもシンプルに見えますが

食べ物に合わせて自然な湯気を作り出すのは、やはり熟練した技が必要になります。

湯気師のほか泡師と呼ばれるスタッフもいます。

ビールの泡のキメの細かさや柔らかさなどを撮影用に調整するスタッフです。

普通は気づきませんが、メーカーや銘柄によってビールの泡の質感は微妙に違います。

ビールの泡は家庭用のミキサーで作ります。

ミキサーにビールを入れて撹拌し、食塩を入れたりして泡の質感を調整していきます。

食べ物の撮影は、こうしたアナログな方法で、いろいろなシズル感を作り出しているのです。
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