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味覚障害、その後 [暮らし]

胃がんの手術から3ヵ月が経ちました。

体力もだいぶ回復し、日中、横になってカラダを休めることも少なくなりました。

とは言え、体重が15㎏も減り、足、腰、胸の筋肉が落ちてしまったので

歩き方が老人のようになっています。

様子を見ながら運動を増やし、筋肉をつけていきたいと思っています。

そして、悩みの種である味覚障害もまだ続いています。

何を食べても美味しくないので食欲がわきません。

この3ヵ月、自分の食欲を刺激するため、毎日のように料理番組ばかり見ていました。

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おかずのクッキング.jpg

今、自分は何が食べたいのか、そして何が食べられるのか。

料理番組を見ていると、食べたいものがいろいろと浮かんできます。

しかし、食べたいと思ったものを食べても、美味しいと感じることができないのが

味覚障害のつらいところです。

なかでも、化学調味料を含んだものや脂質の多いものは、当分、食べられそうもありません。

食欲減退のもうひとつの原因は、抗がん剤です。

大きな副作用はありませんが、服用期間中はどうしても食欲が落ちます。

とは言え、術後に比べると味覚障害も多少は改善してきました。

少しずつですが、味覚が戻ってきたのは何よりもうれしいです。

この3ヵ月の間に、味覚障害の影響を受けないおおよその食べ物が分かってきたので

家内がそれらを中心にした料理を用意してくれています。

肉じゃが、大根のきんぴら、菜花のおひたし、ブロッコリー、白菜漬け、玉ねぎと若布のみそ汁。

食べた量はほんの少しですが、以上が昨夜の晩ごはんです。

野菜中心のメニューは、どうやら味覚障害の影響が少ないようです。

それと、我が家は食後の煮豆が欠かせません。

金時豆、小豆、大豆、黒豆、白いんげん、これらの豆を甘く煮た一品が必ず食卓にのぼります。

食欲がわかず何も食べれない時でも、この煮豆だけは食べることができました。
タグ:味覚障害
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芝生とプール [80年代クロニクルズ]

村上春樹の短篇小説「午後の最後の芝生」は

「中国行きのスロウボート」という短篇集の中に納められた一篇で

主人公のアルバイトである、夏の午後の芝刈りについて書かれています。

炎天下の芝刈り、光の眩しさ、草の匂い、そんなことが描かれた後

アルバイト先の女主人との会話の中で、自分の過去を回想していくという物語です。

80年代の村上春樹作品の中では、とても印象深い作品でした。

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デヴィッド・ホックニーのプールをモチーフにした一連の水彩画と写真集は

シンプルな技法の中に水しぶきや水面の複雑な揺れが表現されていて

穏やかな午後の陽光を感じさせてくれます。

夏の日差しの中で、プールに体を浮かべている心地よさが伝わってくるような作品でした。

「ビッガー・スプラッシュ」
カメラワークス.png

「デヴィッド・ホックニー・カメラワークス」
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芝生とプール。

80年代の半ば、私は芝生とプ―ルのイメージに強く惹かれていました。

私は20代後半でしたが、CMディレクターとしての自分の能力や将来に不安を感じていて

このまま仕事を続けるべきか、思い切って転職したほうがいいのか悩んでいました。

芝生とプールへの憧れは、そういう状況からの逃避願望だったのかもしれません。

その頃、プールクリーナーという職業があることを知りました。

ハワイの高級住宅地のプ―ルを借りて撮影をしている時

柄のついた網を使って、プールの中のゴミや葉っぱをすくっているスタッフがいました。

彼は、プールクリーナーと呼ばれるプール専門の掃除人で

プールのゴミを取り除いたり、水を抜いたプールの底をブラシで磨いたりするのが主な仕事です。

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彼の仕事ぶりは実に丁寧で、黙々とした作業を楽しんでいるようにも見えました。

ランチタイムには、ピックアップトラックに乗った奥さんがサンドイッチを届けてくれます。

木陰でランチを済ませると、彼らは次の依頼先のプールへと向かいました。

なんと理想的な仕事なのだろう。

プールクリーナー。

日本では考えられない仕事だけど、転職するならこういう仕事もありだな、と思いました。

プールクリーナーは、村上春樹とデヴィッド・ホックニーの二つの世界観を

一緒に体現できる仕事ではないでしょうか。

南佳孝「プールサイド」

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プカプカ [70年代クロニクルズ]

1974年頃「気まぐれ飛行船」という深夜放送のラジオ番組がありました。

月曜の深夜1時~3時という時間帯だったが

安物のトランジスタラジオから聞こえてくるこの番組を、私は毎週楽しみにしていました。

パーソナリティは作家の片岡義男とジャズシンガーの安田南。

このふたりの、気まぐれで、もの静かで、思慮深い会話がなんとも魅力的でした。

当時、片岡義男が、雑誌「宝島」の編集長をしていることは知っていたが

安田南という女性がどんな人なのかは、まったく知らなかった。

ただ、ラジオから聴こえてくる彼女の繊細な声と柔らかな話し方、ノンシャランな雰囲気に

私は格別なものを感じていたのです。

番組はその後何年も続いていたが、私もいつしか深夜放送を聴かなくなっていました。

だいぶ経ってから、西岡恭蔵の名曲「プカプカ」のモデルが安田南であることを知りました。

彼女は、かなりのヘビースモーカーだったようで、1日に缶ピース100本ぐらい吸っていたとか。

あらためてこの曲を聴くと、自分が安田南に惹かれた理由が何となく分かるような気がしました。

この曲を聴くたび、私はあの時代の安田南のことを思い出します。

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「プカプカ」は、多くの人たちにカバーされています。

原田芳雄、坂崎幸之助、大塚まさじ、泉谷しげる、宇崎竜童、高田渡、山崎ハコ、森山直太朗

桑田佳祐、つじあやの、福山雅治、かまやつひろし、夏川結衣、桃井かおり、中村雅俊…
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シズル [CM]

食べ物の美味しさや魅力を伝える表現に、シズル感という言葉があります。

もともとは、熱した鉄板の上で肉がジュウジュウと音を立てるような擬音を表す言葉です。

カレールウが、肉やジャガイモと共にご飯の上にかかるシーン。

ハンバーガーパテが、バンズの上に舞い降りて弾むシーン。

チャーハンの米粒が、中華鍋の鍋底から舞い上がるシーン。

カットされたピザを引き上げると、たっぷりのチーズが糸を引くシーン。

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そういう映像をテレビCM等で観たことがあるかと思います。

簡単で何でもなさそうに見えますが、案外、時間のかかるやっかいな撮影です。

狙い通りの映像が撮れるまで、実際の食材を使って何度も繰り返し撮影します。

撮影しているうちに、新たなアイデアや注文が出てくるので時間もかかります。

デジタル全盛の時代でも、食品のシズル感だけは、CGでは作れません。

そんなシズル撮影のとき、お世話になるのが湯気師と呼ばれる撮影スタッフです。

麻婆豆腐や回鍋肉などの熱々の中華料理。

フライドチキンやポテトなどの揚げ物。

肉まんやシウマイなどの蒸し物。

鍋料理やラーメンなどの汁物。

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温かい食べものに絶対に必要なシズルは湯気です。

湯気師とは、それらの食べものに合わせて湯気を作り出すスタッフのことです。

撮影に使う食べものは、素材の美しさや盛り付けの完成度が重要なので

それに合わせて、カメラアングルやライティングなど、若干の修正をしなくてはなりません。

ところが、セッティングをしているうちに本物の湯気はなくなってしまいます。

そこで、あらたに湯気を加える必要がでてきます。

湯気を出すホースの先端に食べ物の形状に合わせた被せ物を取り付け

その被せものから直に食べ物に湯気をあてていきます。

20~30秒間湯気をあて、食べ物に湯気がなじんだ頃に被せ物を外して撮影します。

湯気師の作業はとてもシンプルに見えますが

食べ物に合わせて自然な湯気を作り出すのは、やはり熟練した技が必要になります。

湯気師のほか泡師と呼ばれるスタッフもいます。

ビールの泡のキメの細かさや柔らかさなどを撮影用に調整するスタッフです。

普通は気づきませんが、メーカーや銘柄によってビールの泡の質感は微妙に違います。

ビールの泡は家庭用のミキサーで作ります。

ミキサーにビールを入れて撹拌し、食塩を入れたりして泡の質感を調整していきます。

食べ物の撮影は、こうしたアナログな方法で、いろいろなシズル感を作り出しているのです。
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