ユートピアはどこに? [演劇]
古い荷物の整理をしていたら、高校の時に書いた戯曲が出てきた。
高校の演劇部で上演した「ここより他の場所」という芝居です。
題名は大江健三郎の小説から拝借したが、氏の小説とは無関係のオリジナル戯曲です。
久しぶりにめくると、少年の無邪気な叫び声のような台詞が書かれていた。
(以下、劇中の台詞の中からの抜粋)
僕たちが、コロンブスのように新しい大陸を発見することがあるならば、
それは失われた大陸だ。
今こそ、失われた大陸に向かって船出しよう!
それが僕たちの、十五少年漂流記なのだ!
挫折と言う名の暗闇の中で、僕たちが手に入れたものが虚しさだけならば、
そんなものは、明かりを灯して消してしまえ!
行くことができない時代。
だからと言って立ち止まるな!
僕は歩いていくだろう、この大陸の地平線の彼方まで。
あるいは、この国の北の果てまでも。
あるいは、南の果てまでも。
地平線のギリギリに立って振り返ったら、
もしかしたら失われた大陸があるかもしれない。
ここより他の場所こそが、僕たちの思想であり、人生であり、国であり、未来なのだ!
ほら、夜空へ向かって羽ばたいていった一羽の巨大な鷹が、
地平線の彼方に消えていく。
夜ならば、夜ならば、朝になれ!
(以上)
稚拙な台詞まわしに苦笑いをしながら、ページをめくったのだが、
実はユートピア願望のようなものが、今でも僕の中にはくすぶっている。
40年以上経っても、人のキホンは変わらないのだな、と思う。
かつて「ここより他の場所」を目指し、再び「ここ」に戻ってきた僕は、
「ここより他の場所」に、本物のユートピアなんか存在しないことも判っている。
それでも「ここより他の場所」を目指し、ユートピアを探そうとしている自分がいる。
きっと、それは自分の心の中にあるのかもしれません。