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映写技師に花束を [映画]

ニュー・シネマ・パラダイス.jpg

「ニュー・シネマ・パラダイス」という映画が初めて公開されたのは、

銀座のシネスイッチというミニシアターだった。

公開時は、シネスイッチの動員記録を作ったほど観客が押し寄せた。

シチリアの田舎で青春時代を過ごした映画監督の主人公が、

慕っていた映画館の映写技師の訃報を聞き、

故郷に帰ってきたところから映画は始まる。

「ニュー・シネマ・パラダイス」は、ある意味、映写技師にスポットをあてた作品といえる。

僕は高校の頃、映写技師を職業にしようと考えていたので、この作品には率直に感動した。

先週、横浜で会った友人も、この作品には思い出があると言っていた。

友人も「ニュー・シネマ・パラダイス」を公開時に観て感動し、

後日、ある計画をもって、もう一度その作品を観に行った。

その計画とは、花束を持って最終上映回に入り、

終映後の映写技師に敬意をこめて、それを渡そうというものだ。

そして、その方の都合がよければ、映画の話をしながら一杯やりたいと考えていた。

友人は、2度目の鑑賞も感激し、花束を抱えて映写技師に面会を申し込んだ。

ところが、その劇場には映写技師と呼ばれる人がいなかった。

当時シネスイッチは、通常5巻~7巻ほどある映画の35㎜フィルムを

1本にまとめて上映する自動上映システムを導入していたため、

映写技師が存在しなかったのだ。

自動上映とはいえ、映写をするのだから係の人はいる。

2台の映写機を切り替えながら上映する、厳密な意味での映写技師がいなかったのだ。

計画を実現できなかった友人は、花束を抱えて銀座のバーへ入った。

そして、話を聞いてくれたバーのホステスに花束をあげてしまったという。

いい話だと思った。


現在、シネコンのほとんどが、ハードディスクに入ったデータを上映する

デジタル上映システムになっている。

映画館にフィルムが存在しないのだから、映写技師という職業もなくなりつつあるのだろうか。


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コメント 52

rtfk

私も妻も この映画が大好きです☆
なので息子達も好きになりました^^)
彼らにスクリーンで見せてやりたいです

by rtfk (2012-08-31 20:28) 

non_0101

もう、今の映画館では映写技師がいないのですね。
最近に観た「シグナル~月曜日のルカ~」という邦画では、
「ニュー・シネマ・パラダイス」のように映写技師が出てきて面白かったです。
やっぱり技師がいると思っている方が、映画も楽しく感じますよね☆
by non_0101 (2012-08-31 22:39) 

song4u

この映画、
ぼくにとっては好きと言うよりも、もう伝説の領域に入っているかもしれません。

しかし今日のお話は、ある意味、それと同等の価値があるかもしれませんね。
映写技師さんに花束を渡そうと考えられたことが、まずもって素敵です。
だけど、渡せずにその場を去るしかなかった。
それで終わったら、ちょっと悲しいだけのお話ですよね。
でも、ちゃんと続きがありました。良かったなあ・・・って気持ちになりました。^^
by song4u (2012-08-31 22:42) 

DEBDYLAN

最後のキスシーンの編集フィルムに感動してしまいました。
もう1度しっかり観てみたい作品です。

by DEBDYLAN (2012-08-31 22:45) 

末尾ルコ(アルベール)

シネコンも過当競争で客足が落ち、「映画以外」でお金を稼ごうとしているらしいですね。
結局今は1から「映画ファン」を育てねば映画文化は消滅する…日本はそこまでの危機に来ていると感じています。

ジンネマンの「ジュリア」。傑作ですね。
「ジャッカルの日」や「真昼の決闘」も大好きです。
特に「真昼の決闘」。

                            RUKO

by 末尾ルコ(アルベール) (2012-08-31 23:24) 

KEI

初めまして。ニューシネマパラダイスは私の泣ける映画NO1です。
良いお話しですね。
私らの時代も捨てたもんじゃないと思い直しました。^^;
by KEI (2012-08-31 23:39) 

八犬伝

ニューシネマパラダイス、つい3ヶ月ほど前に見て
感度に心振るわせました。

花束の話、いい話ですね。

そうか、でも最近じゃ技師すらいないのですね。
なんだか、ロマンがありませんね。
by 八犬伝 (2012-09-01 00:15) 

engrid

素晴らしい映画ですよね、、すすめられて見てる人は、随分みえるのではないかしら、そして感動して、また、すすめる、その繰り返しの映画だと思います
音楽も、、、
バスタオル級に、うるうるしてしまいます
花束のお話、いいですね、素敵な彼、Nice!
by engrid (2012-09-01 06:44) 

cafelamama

rtfkさま
劇場で、もういちど観たい作品ですね。
いろんなバージョンが公開されましたが、
最初に公開されたものが、一番いいと思います。
by cafelamama (2012-09-01 09:23) 

cafelamama

non_0101さま
「月曜日のルカ」面白そうですね。
ネットで予告を見たら、映写室のシーンがたくさんあって興味深いです。
映画の上映は、画質も音質も、
デジタルのほうが格段にいいと思っています。
でも、映画を観る楽しみはそれだけではないと思っています。
by cafelamama (2012-09-01 09:42) 

cafelamama

song4uさま
僕もこの話を聞いて、友人の思いがとても素敵なものだと思いました。
映画のラストシーン、ジャック・ペランが試写室で懐かしのフィルムを
観るシーンがあります。
映写室でそれをかけている人がちらっと出てくるのですが、
その人が、この映画の監督、ジュゼッペ・トルナトーレです。
なんとも粋な出演をされています。
by cafelamama (2012-09-01 10:38) 

cafelamama

DEBDYLANさま
このシーンは、なぜか涙が出てきます。
哀しいシーンではないし、物語もありません。
ただ、古い映画のキスシーンが断片的に続くだけです。
主人公の青春時代の思い出や人生の移り変わりを
観客が想像してしまうから感動するんでしょうね。
見事な映画的シーンだと思います。
by cafelamama (2012-09-01 10:53) 

cafelamama

RUKOさま
まっとうな映画ファンを増やさないと、映画文化は消滅する。
ほんとに、そう思います。
by cafelamama (2012-09-01 10:55) 

cafelamama

八犬伝さま
花束の話、ぼくもすごくいい話だと思いました。
映画の上映は、デジタルのほうが安上がりだし、
上映効果も高いことはわかるんですが、
映画を観る楽しみはそれだけじゃないと思うんです。
まだまだ、アナログな映写技師のいる上映にこだわりたいと思っています。
by cafelamama (2012-09-01 10:59) 

そらへい

いい話ですね。
映画に感動してもそこまでする人はいないかも。

最近は映画のデジタル化が進んでいるそうで
デジタル化に対応出来ない映画館が閉館に追い込まれているそうです。
あるテレビ番組で,シネコンでは上映されないような映画を上映している伊勢市の
良心的な映画館がそんな危機に陥っていることを伝えていました。
by そらへい (2012-09-01 12:43) 

tommy88

花束の話は短編小説の題材になると思います。吉行淳之介が書きそうな感じの話だと思います。私にとっても好きな題材です。
後から言う人々にとっては、ちょっと考えれば分かることじゃないかと笑うのでしょうが、ひらめきや思いつきの、効果の現れ方に目が行くと、つい無防備になってしまいがちな部分があって、そこのところで肩すかしを食った時の、「突き放されてしまった」という感覚が、大げさに言えば文学のふるさとであり、日常の中でのエアポケットのような断面は、できあがった短編だと思います。もちろん、ある種の方針の後、行くのはバーでなければいけません。スナックでは似合わない。
そんなことを勝手に考えてしまう、「花束」でした。無器用さに乾杯。
by tommy88 (2012-09-01 13:16) 

(。・_・。)2k

粋なことをするご友人ですね
粋な人が減り 職人さんも減る昨今
職業にも変化が激しいですが
無くして欲しくないモノも沢山ありますね

素敵なラストシーンでした(^^)

by (。・_・。)2k (2012-09-01 15:03) 

めい

花束を用意なさったご友人は粋な方ですね
せっかくだったのに技師さんがいなかったのは残念でした
味気ないと言えばそうですが
時代なんでしょうね。


by めい (2012-09-01 18:32) 

ダミアン88

自分が妻に送った初めてのプレゼントは
この映画のビデオでした。
今自宅に嫁と一緒に存在しますが、ビデオデッキがもうありません
でも何度思い出しても背筋が熱くなる映画です。

by ダミアン88 (2012-09-01 18:49) 

cafelamama

そらへいさん
デジタルファイルなら、コピーしてHDに入れるだけなので
映画会社がデジタルシステムに行きたがるのは
無理もないかもしれません。
名画座も費用のことを考えると、デジタルシステムに移行するのは、
なかなか出来ないという事情があるんでしょうね。
しかし、良心的な映画館が、そういう事情で閉館せざるをえないというのは、あまりにもさびしい時代になりました。
by cafelamama (2012-09-01 19:43) 

cafelamama

engrid さま
ラストシーンは、主人公がじっとフィルムを観ているだけだし、
古い映画のキスシーンが断片的に流れるだけ。
哀しいセリフや物語もないのに、観客は感動してしまいます。
そのシーンの背景にある主人公の思い出や人生を
観客が想像し共感するから感動するんでしょうね。
それが、映画だと思います。

by cafelamama (2012-09-01 19:44) 

cafelamama

tommy88さま
友人の話は、僕も短編小説にしたら面白いと思いました。
映画なんか、とっくに観なくなった中年男が主人公です。
中年男は、ふとしたきっかけでこの作品に出合い、
映写技師に花束を渡そうと計画するという話です。
そんな中年男が、銀座へ花束をもっていくわけだから、
彼が行くのは、やはり、バーです。
スナックでも、クラブでもなく、バーだと思います。

by cafelamama (2012-09-01 20:01) 

cafelamama

2kさま
映画は、ますます制作も上映もデジタル化していくでしょう。
それは、それでいいと思います。
ただ、フィルムカメラの良さにこだわる人がいるように
フィルムでの映画制作や上映にこだわる人も大勢います。
僕も、そのひとりとして、これからもフィルムにこだわっていきたいと
思います。

by cafelamama (2012-09-01 20:12) 

cafelamama

めいさま
映写技師のいない映画館は、僕も味気ないと思います。
デジタルシステムのシネコンが増えるのは
仕方のないことですが、そのような映画館ばかりでは、
まっとうな映画ファンが育たなくなるような気がするんです。

by cafelamama (2012-09-01 20:16) 

cafelamama

ダミアン88さま
奥様に送った初めてのプレゼントが
「ニュー・シネマ・パラダイス」なんていい話ですね。
映画は、VHSのデッキがなくても、
ふたりの思い出としてずっと残っていくんでしょうね。

by cafelamama (2012-09-01 20:19) 

cafelamama

KEIさま
コメントありがとうございます。
友人のこの話は、今年聞いた話の中で特に印象深い話でした。
われらの時代の、いい話を探していきたいと思います。

by cafelamama (2012-09-01 20:25) 

Lonesome社っ長ょぉ〜

やはり本家のキスシーンは美しくまた感動的です。
こんなのを見るともう日本物はぎこちなくてダメですね。

映写室から伸びる光の束に館内の埃が映し出されて、
なんて光景はもう無いのでしょうね。
by Lonesome社っ長ょぉ〜 (2012-09-01 20:34) 

塚ぴょん

ヤバイ!涙…でた。
by 塚ぴょん (2012-09-01 21:24) 

はまちゃん

将来的に家庭に100インチのテレビが当たり前になってきたりすると
映画館自体がなくなってしまう可能性が出てきますよね…
by はまちゃん (2012-09-01 22:56) 

はなだ雲

理性的であって情感もあって、両極を併せ持っていらして
うらやましいくらいの文章力ですねー^^
by はなだ雲 (2012-09-02 00:12) 

hatumi30331

私もこの映画・・・大好きです!^^
by hatumi30331 (2012-09-02 00:37) 

夏炉冬扇

お早うございます。
映画館で映画をみなくなってウン十年です。
近くにできたイオンモールに東宝シネマができてます。
昔の映画がかかるのなら行ってみようか…などと。
by 夏炉冬扇 (2012-09-02 07:00) 

cafelamama

Lonesome社っ長ょぉ〜
>映写室から伸びる光の束に館内の埃が映し出されて、

ああいう光景も、観客の想像力を働かせる
ひとつの効果だったように思います。
by cafelamama (2012-09-02 07:33) 

cafelamama

はまちゃん さま
有機ELやその他の巨大モニターが普及しても、
映画館はなくならないと思います。
どんなにいいシステムがあっても、
自宅で見るのと、映画館で観るのは、やはり違うでしょうね。

by cafelamama (2012-09-02 07:39) 

cafelamama

塚ぴょんさま
ラストのキスシーンは、哀しいシーンでもないのに涙が出てきます。
実に映画的ですね。
by cafelamama (2012-09-02 07:41) 

cafelamama

はなだ雲さま
友人の話が、あまりにも印象的だったので、
そのまま書きました。
おほめいただいて、恐縮です。
by cafelamama (2012-09-02 07:52) 

cafelamama

hatumi30331 さん
この映画のファンは多いですね。
機会があれば「スプレンドール」というイタリアの映画をご覧ください。
「ニュー・シネマ・パラダイス」と同じ時期に公開された作品で
これは、映画館主と映写技師が主人公の作品です。
by cafelamama (2012-09-02 07:54) 

cafelamama

夏炉冬扇さま
古い映画を劇場で観たいと思うファンも大勢いますね。
シネコンでも、名画座のようなシアターをひとつ常設すればいいのに、
と僕も思っています。
古い作品はフィルムでしか上映できないから、
デジタルシステムにそぐわないのでしょうかね。
by cafelamama (2012-09-02 07:57) 

リキマルコ

私もこの映画好きです!
だんだんデジタル化が進んでアナログナものがなくなっていくのは寂しいですね・・・。
昔の映画はゆっくり息をしながら見ることができるような気がします(*^^*)
by リキマルコ (2012-09-02 10:53) 

青竹

ニューシネマパラダイスは大好きな映画です。
モリコーニの音楽も素敵です。
以前、友人のヴァイオリニストがコンサートを開いたとき
遠方から来た私のためにアンコール曲でニューシネマパラダイスの
曲を演奏してくれました。
by 青竹 (2012-09-02 11:34) 

ネオ・アッキー

cafelamamaさんこんにちは。
5555nice!踏んでいただいてありがとう御座いました。
話は変わりますが、以前の記事にあったフランスの三つ星レストラン機会があったら行ってみたいです。
by ネオ・アッキー (2012-09-02 15:07) 

cafelamama

リキマルコさま
ゆっくり息をしながら~
いい言葉ですね。
デジタルがいけないわけではないけれど、
アナログには、受け取り手の想像力をかきたてるものがあります。
そこが、大事なんだと僕は思います。
by cafelamama (2012-09-02 19:07) 

cafelamama

青竹様
ニュー・シネマ・パラダイスの愛のテーマ、
ヴァイオリンでの演奏は、きっと、いいでしょうね。
聴いてみたいです。

by cafelamama (2012-09-02 19:13) 

cafelamama

ネオ・アッキーさま
アラン・パッサールの「アルページュ」は、
7区のロダン美術館近くです。
ぜひ、いちど訪問してください。
11月ぐらいに、僕も行きたいと思っています。
by cafelamama (2012-09-02 19:19) 

リキマルコ

そうですね!デジタルがいいときもありますが、自分で広げていけない感じがして・・・最近はそれが多すぎて私の想像力がおとなしくなっております・・・(^^;)
by リキマルコ (2012-09-02 21:40) 

タイド☆マン

>ロールケーキ
未だ お店に入ったコトがありませんで・・・(恥)
by タイド☆マン (2012-09-03 19:14) 

そらへい

記憶が曖昧だったので、DVDを借りてみました。
ストーリーや役者たちにも感動ですが
美しい映像と音楽に参りました。
久しぶりに「映画」を見た気がしましたね。
by そらへい (2012-09-03 22:35) 

cafelamama

タイド☆マンさま
「レティシアの月」機会があれば、どうぞ。

by cafelamama (2012-09-05 14:19) 

cafelamama

そらへいさん
この作品、いろんなヴァージョンが出ています。
完全版とかディレクターズカット版とか。
最初に公開されたヴァージョンが、いちばんいいですね。
by cafelamama (2012-09-05 19:21) 

SILENT

花束を待っている人がいました。
世界には得難い人がいるもんですね。
以下ご覧くださると嬉しい限りです。
http://www.chikumashobo.co.jp/new_chikuma/tuzuki/06.html
by SILENT (2012-09-07 15:34) 

cafelamama

SILENTさま
花束を待っている映写技師の記事、大変おもしろく拝見しました。
ピンク映画の「いい場面」コレクション、僕も観てみたいです。

by cafelamama (2012-09-07 20:26) 

SILENT

ご覧になっていただき嬉しいです。
伯父が、ある映画社のろくおんぎしでした。
昔の録音テープを入れたブリキの丸い缶を
おねだりしていたのですが、願いは叶いませんでした。
映画館の小屋は老朽化して壊されても、人の心の記憶には、
壊されないで残りますね。
編集フィルムきょうみぶかいですね。
by SILENT (2012-09-08 09:27) 

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