極私的日本映画ベストテン [映画]
好きな映画は何度も繰り返して観ます。
僕にとっていい映画は、何度も繰り返して観る映画です。
成瀬巳喜男や小津安二郎だけでベストテンが作れてしまうほどです。
だから、日本映画のベストテンも同じ監督の作品は選ばないということを条件にしました。
天変地異や大事件に挑むヒーローを描いた物語よりも、
畳の上に転がった10円玉から始まるような物語のほうが僕は好きです。
黒澤明作品がベストテンに入っていないのは、そういう理由かもしれません。
1.流れる 監督:成瀬巳喜男
東京柳橋の芸者置屋が時代に取り残されていく物語の中に、
ひとつの時代の終焉を描いた作品。
ひとつの世界が滅びるときの哀しさ、儚さ、美しさ、無常感。
黄昏を見つめる成瀬巳喜男監督のまなざしと冷静さは、見ていて鳥肌が立つ。
成瀬は普通の映画なら見せ場になるようなシーンを、あえて描かない。
ケレンや誇張を嫌い、映画としてのたたずまいや光と影には細やかに心を配る。
そして時に観客を突き放す。
その突き放された感覚が不思議な余白となって深い印象を残す。
日本映画芸術の最高峰に位置する作品で、途方に暮れるほどの傑作だと思う。
2.東京物語 監督:小津安二郎
家族のつながりと、その喪失を描いた小津安二郎の傑作。
東京に住む子供たちに会いに来た老夫婦が感じる親子関係の違和感が、
しみじみと描かれる。
やわらかで、繊細で、おだやかなまなざしの中で語られる人生の無常感に、
胸が揺さぶられる。
3.祇園囃子 監督:溝口健二
伝統的なしきたりが残る京都の色街に生きる芸妓と、
それを取り巻く人々の人間模様を描いた溝口健二の傑作。
女たちの心のありようや生き方を素晴らしい情感で見せていく。
同じ溝口作品の「西鶴一代女」とどちらを選ぶか相当迷った。
4.按摩と女 監督:清水宏
山間の温泉地の按摩が、東京からきた謎の女(高峰三枝子)に、
ほのかな恋心を抱くという物語。
盲人の恋をとおして、映画の中に「音と匂い」の気配を描くことに成功した作品。
息をのむような緊張感を醸し出す緻密な演出力に驚愕する。
5.二十四の瞳 監督:木下恵介
島に赴任した一人の女教師と12人の教え子たちの心のつながりを描いた作品。
泣ける映画やヒューマニズムを前面に出した映画は好きではないが、この作品は別格。
数々の名場面に、無条件に感動してしまう。
叙情派木下恵介の真骨頂。
6.白い巨塔 監督:山本薩夫
大学医学部内の権力争いや、大学医学部内の裏側を描いた作品。
すべての登場人物のキャラクターの描き方が印象的でこれほど秀逸な作品は
「七人の侍」とこの作品ぐらいしか思いつかない。
映画は、人物のキャラクター造形が大事なのだと思わせてくれる作品。
7.祭りの準備 監督:黒木和雄
映画の脚本家になる夢を持つ主人公が、青春期特有の性の悩み、家族の問題、
地元のしがらみの中で、祭りを求めてさまよう姿を描いた作品。
青春とは、いつの時代にも、祭りの準備の季節なのだ。
8.夫婦善哉 監督:豊田四郎
生活力も計画性もない道楽男と、そんな男についていくしっかり者の女房の
男女の機微を情感たっぷりに描いた作品。
ダメっぷりを感じながらも、離れられない男と女のダラダラとした曖昧な関係を繊細に描くことは、
日本映画にしかない表現ではないだろうか。
森繁久弥と淡島千景。名優たちの息の合った演技も素晴らしい。
9.Keiko 監督:クロード・ガニオン
大学を卒業したばかりのOLが、結婚するまでの恋愛観と人生観を描いた作品。
劇映画なのに、主人公の女性のドキュメンタリーのような不思議な感覚をもっている。
カナダ人の監督クロード・ガニオンがみずみずしい感覚で、70年代の日本人女性を描いている。
10.八月の濡れた砂 監督:藤田敏八
夏の終わりの湘南海岸を舞台に、青春の反逆的願望とシラけた感情を描いた作品。
ヨットが行くあてもなく彷徨うラストシーンが、当時の日本映画の運命を暗示していた。
高校2年の時、観客がたった2人だけの封切館で、この映画を観た。
この作品には個人的な思い入れが強くある。
以下、ベスト30
11.サード 監督:東陽一
12.遠雷 監督:根岸吉太郎
13.午後の遺言 監督:新藤兼人
14.しとやかな獣 監督:川島雄三
15.天国と地獄 監督:黒澤明
16.切腹 監督:小林正樹
17.男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 監督:山田洋次
18.櫻の園 監督:中原俊
19.ナビイの恋 監督:中江裕司
20.あの夏、いちばん静かな海 監督:北野武
21.書を捨てよ町へ出よう 監督:寺山修司
22.日本の夜と霧 監督:大島渚
23.人間蒸発 監督:今村昌平
24.リンダリンダリンダ 監督:山下敦弘
25.青春デンデケデケ 監督:大林宣彦
26.火宅の人 監督:深作欣治
27.ヴァイブレータ 監督:廣木隆一
28.ゆきゆきて神軍 監督:原一男
29.悪人 監督:李相日
30.間宮兄弟 監督:森田芳光
僕にとっていい映画は、何度も繰り返して観る映画です。
成瀬巳喜男や小津安二郎だけでベストテンが作れてしまうほどです。
だから、日本映画のベストテンも同じ監督の作品は選ばないということを条件にしました。
天変地異や大事件に挑むヒーローを描いた物語よりも、
畳の上に転がった10円玉から始まるような物語のほうが僕は好きです。
黒澤明作品がベストテンに入っていないのは、そういう理由かもしれません。
1.流れる 監督:成瀬巳喜男
東京柳橋の芸者置屋が時代に取り残されていく物語の中に、
ひとつの時代の終焉を描いた作品。
ひとつの世界が滅びるときの哀しさ、儚さ、美しさ、無常感。
黄昏を見つめる成瀬巳喜男監督のまなざしと冷静さは、見ていて鳥肌が立つ。
成瀬は普通の映画なら見せ場になるようなシーンを、あえて描かない。
ケレンや誇張を嫌い、映画としてのたたずまいや光と影には細やかに心を配る。
そして時に観客を突き放す。
その突き放された感覚が不思議な余白となって深い印象を残す。
日本映画芸術の最高峰に位置する作品で、途方に暮れるほどの傑作だと思う。
2.東京物語 監督:小津安二郎
家族のつながりと、その喪失を描いた小津安二郎の傑作。
東京に住む子供たちに会いに来た老夫婦が感じる親子関係の違和感が、
しみじみと描かれる。
やわらかで、繊細で、おだやかなまなざしの中で語られる人生の無常感に、
胸が揺さぶられる。
3.祇園囃子 監督:溝口健二
伝統的なしきたりが残る京都の色街に生きる芸妓と、
それを取り巻く人々の人間模様を描いた溝口健二の傑作。
女たちの心のありようや生き方を素晴らしい情感で見せていく。
同じ溝口作品の「西鶴一代女」とどちらを選ぶか相当迷った。
4.按摩と女 監督:清水宏
山間の温泉地の按摩が、東京からきた謎の女(高峰三枝子)に、
ほのかな恋心を抱くという物語。
盲人の恋をとおして、映画の中に「音と匂い」の気配を描くことに成功した作品。
息をのむような緊張感を醸し出す緻密な演出力に驚愕する。
5.二十四の瞳 監督:木下恵介
島に赴任した一人の女教師と12人の教え子たちの心のつながりを描いた作品。
泣ける映画やヒューマニズムを前面に出した映画は好きではないが、この作品は別格。
数々の名場面に、無条件に感動してしまう。
叙情派木下恵介の真骨頂。
6.白い巨塔 監督:山本薩夫
大学医学部内の権力争いや、大学医学部内の裏側を描いた作品。
すべての登場人物のキャラクターの描き方が印象的でこれほど秀逸な作品は
「七人の侍」とこの作品ぐらいしか思いつかない。
映画は、人物のキャラクター造形が大事なのだと思わせてくれる作品。
7.祭りの準備 監督:黒木和雄
映画の脚本家になる夢を持つ主人公が、青春期特有の性の悩み、家族の問題、
地元のしがらみの中で、祭りを求めてさまよう姿を描いた作品。
青春とは、いつの時代にも、祭りの準備の季節なのだ。
8.夫婦善哉 監督:豊田四郎
生活力も計画性もない道楽男と、そんな男についていくしっかり者の女房の
男女の機微を情感たっぷりに描いた作品。
ダメっぷりを感じながらも、離れられない男と女のダラダラとした曖昧な関係を繊細に描くことは、
日本映画にしかない表現ではないだろうか。
森繁久弥と淡島千景。名優たちの息の合った演技も素晴らしい。
9.Keiko 監督:クロード・ガニオン
大学を卒業したばかりのOLが、結婚するまでの恋愛観と人生観を描いた作品。
劇映画なのに、主人公の女性のドキュメンタリーのような不思議な感覚をもっている。
カナダ人の監督クロード・ガニオンがみずみずしい感覚で、70年代の日本人女性を描いている。
10.八月の濡れた砂 監督:藤田敏八
夏の終わりの湘南海岸を舞台に、青春の反逆的願望とシラけた感情を描いた作品。
ヨットが行くあてもなく彷徨うラストシーンが、当時の日本映画の運命を暗示していた。
高校2年の時、観客がたった2人だけの封切館で、この映画を観た。
この作品には個人的な思い入れが強くある。
以下、ベスト30
11.サード 監督:東陽一
12.遠雷 監督:根岸吉太郎
13.午後の遺言 監督:新藤兼人
14.しとやかな獣 監督:川島雄三
15.天国と地獄 監督:黒澤明
16.切腹 監督:小林正樹
17.男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋 監督:山田洋次
18.櫻の園 監督:中原俊
19.ナビイの恋 監督:中江裕司
20.あの夏、いちばん静かな海 監督:北野武
21.書を捨てよ町へ出よう 監督:寺山修司
22.日本の夜と霧 監督:大島渚
23.人間蒸発 監督:今村昌平
24.リンダリンダリンダ 監督:山下敦弘
25.青春デンデケデケ 監督:大林宣彦
26.火宅の人 監督:深作欣治
27.ヴァイブレータ 監督:廣木隆一
28.ゆきゆきて神軍 監督:原一男
29.悪人 監督:李相日
30.間宮兄弟 監督:森田芳光