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思いやりと美意識 [暮らし]

夫婦喧嘩の原因は些細なことが多い。

何が原因だったかは、大抵忘れてしまうのだが、

後々まで覚えている原因もいくつかある。

双子の子どもが生まれて間もない頃でした。

育児は妻にまかせっきりで、僕は忙しく働いていた。

その日も深夜まで仕事をし、疲れ果てて帰宅した。

1996・08 自宅の風景002.jpg

買ったばかりのソファに身を投げ出そうとしたら、

その上に、畳まれたおしめが置かれていた。

育児に追われ、妻も疲れがたまっているのは判るが、

前日も、ソファの上にはおしめが置かれていた。

座ろうと思えば、おしめを除ければよいのだが、そういう問題ではない。

アルフレックスのソファに、おしめが置かれている景色が情けないのだ。

1996・08 自宅の風景001.jpg

僕は食卓の椅子に座り、おしめの置かれたソファを眺めた。

少し、イライラしながら妻に言った。

「ソファのおしめ、何とかならないの」

「今、やっと畳み終わったばかりなのよ」

「でも、あれじゃ座れないでしょ」

「除ければ座れるわ」

釈然としなかった。

そういうことじゃないんだと言うつもりが、思わず口が滑った。

「ソファの上におしめを置くなんて美意識が足りないんだよなぁ」

「あなたには、思いやりが足りません」

その言葉は完膚なきまで僕を打ちのめした。

赤ん坊がいる家庭内に、美意識を持ち込もうとした僕が浅はかだった。

忙しいときは、どうしても自分中心に物事を考え、人を思いやる気持ちがなくなってしまう。

そう言えば、忙しいという字は心を亡くすと書く。
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