思いやりと美意識 [暮らし]
夫婦喧嘩の原因は些細なことが多い。
何が原因だったかは、大抵忘れてしまうのだが、
後々まで覚えている原因もいくつかある。
双子の子どもが生まれて間もない頃でした。
育児は妻にまかせっきりで、僕は忙しく働いていた。
その日も深夜まで仕事をし、疲れ果てて帰宅した。
買ったばかりのソファに身を投げ出そうとしたら、
その上に、畳まれたおしめが置かれていた。
育児に追われ、妻も疲れがたまっているのは判るが、
前日も、ソファの上にはおしめが置かれていた。
座ろうと思えば、おしめを除ければよいのだが、そういう問題ではない。
アルフレックスのソファに、おしめが置かれている景色が情けないのだ。
僕は食卓の椅子に座り、おしめの置かれたソファを眺めた。
少し、イライラしながら妻に言った。
「ソファのおしめ、何とかならないの」
「今、やっと畳み終わったばかりなのよ」
「でも、あれじゃ座れないでしょ」
「除ければ座れるわ」
釈然としなかった。
そういうことじゃないんだと言うつもりが、思わず口が滑った。
「ソファの上におしめを置くなんて美意識が足りないんだよなぁ」
「あなたには、思いやりが足りません」
その言葉は完膚なきまで僕を打ちのめした。
赤ん坊がいる家庭内に、美意識を持ち込もうとした僕が浅はかだった。
忙しいときは、どうしても自分中心に物事を考え、人を思いやる気持ちがなくなってしまう。
そう言えば、忙しいという字は心を亡くすと書く。
何が原因だったかは、大抵忘れてしまうのだが、
後々まで覚えている原因もいくつかある。
双子の子どもが生まれて間もない頃でした。
育児は妻にまかせっきりで、僕は忙しく働いていた。
その日も深夜まで仕事をし、疲れ果てて帰宅した。
買ったばかりのソファに身を投げ出そうとしたら、
その上に、畳まれたおしめが置かれていた。
育児に追われ、妻も疲れがたまっているのは判るが、
前日も、ソファの上にはおしめが置かれていた。
座ろうと思えば、おしめを除ければよいのだが、そういう問題ではない。
アルフレックスのソファに、おしめが置かれている景色が情けないのだ。
僕は食卓の椅子に座り、おしめの置かれたソファを眺めた。
少し、イライラしながら妻に言った。
「ソファのおしめ、何とかならないの」
「今、やっと畳み終わったばかりなのよ」
「でも、あれじゃ座れないでしょ」
「除ければ座れるわ」
釈然としなかった。
そういうことじゃないんだと言うつもりが、思わず口が滑った。
「ソファの上におしめを置くなんて美意識が足りないんだよなぁ」
「あなたには、思いやりが足りません」
その言葉は完膚なきまで僕を打ちのめした。
赤ん坊がいる家庭内に、美意識を持ち込もうとした僕が浅はかだった。
忙しいときは、どうしても自分中心に物事を考え、人を思いやる気持ちがなくなってしまう。
そう言えば、忙しいという字は心を亡くすと書く。