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その後の鳩の家 [暮らし]

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以前、鳩の家に毎朝集まるおじさんたちのことを書きました。

毎朝、近所の鳩の家に60代のおじさんたちが3人集まり、

主人の留守中に庭先で飼われているレース鳩を眺め、

日がな、鳩と天気の話をして夕方になると帰っていくという話です。

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その鳩の家の常連のS氏が姿を見せなくなって、2ヵ月ぐらい経つ。

最初は具合でも悪いのかと思っていたが、海岸を散歩をするSさんの姿を見た人がいるし、

近所のコンビニで買い物をするSさんの姿を見た人もいる。

なのに、Sさんが鳩の家には来なくなった。

そのことについて誰も詮索しようとはしない。

僕が尋ねると「他の場所を見つけたんだろ」と、K氏は言う。

思い当たる場所がひとつあった。

海辺に立ち寄り温泉をやっているホテルがあり、

そこのロビーで新聞を読んでいるSさんを見た人がいた。

そこなら、天候に左右されないし、入浴に来た地元の人たちと世間話もできる。

Sさんが河岸を変えた理由は分からないが、

「ここよりほかの場所」を選んだことだけは、たしかなようだ。

「ここ」にいては果たしえないことがあったのだろう。

単調な暮らしにかまけているうちに何かが失われていくように思うことがある。

そんなときは、自分の中にある何かを入れ替えるか、他の場所に行ってみようとするものだ。

何か手ごたえのある実感を求めて。

僕自身も、それを実感するために野菜作りを始めた。

わずかな畑だが、やることはたくさんある。

失敗もあるが、達成感もある。

Sさんは鳩の家には、しばらく現れないだろう。

僕は相変わらず、毎朝3人分のコーヒーを淹れて鳩の家に通い、

おじさんたちの専門的過ぎる天気の話を聞きながら、鳩を眺めている。
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